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メールで相談する「ライブコマースって中国で流行っているみたいだけど日本ではどうなの?」
EC担当者の方であれば、市場動向が気になっている方も多いのではないでしょうか?
中国ではすでに一般的な販売手法として認知されている「ライブコマース」は日本ではまだ根付いておらず、今後普及するには課題がありそうです。
この記事では、
についてわかりやすく解説していきます。今後のEC展開を考える際の参考にしてみてください。
中国で成功を収めたことから日本でも流行るだろうと言われていたライブコマースですが、ブームの熱が下がってきています。中国と日本では行動スタイルも異なるため、日本ではまだ根付いていないのが現実です。その証拠として、2018年以降日本でライブコマースに参入した以下の企業がすでに撤退し、サービスが終了しています。
ライブコマースが日本で中国のように普及していない最大の理由は、消費者の中に商品に対する不安・不信がそこまでないという点が挙げられます。日本では、通常のEコマースでもイメージと乖離した商品が送られてくるなどのトラブルはめったに起こりません。そのため、ライブコマースである必要がそこまでないのかもしれません。
また、ライブコマースの客層(若年層)が「お金と時間を持っていないこと」も日本でライブコマースが根付かない理由の1つとして考えられます。スマホでライブコマースを見るような若者は、お金と時間にそこまで余裕はありません。比較的お金を持っている高齢世代はスマホよりもテレビや新聞をよく見ます。お金に余裕がある人はテレビショッピングで購入し、時間がない人はAmazonなどの通販サイトで購入します。要するに、「ライブコマースがどの客層にも合っていない」ということがわかります。
現に、日本ではこれだけITが普及した現代にあってもまだ、ジャパネットたかたなどが業績を伸ばしています。(ジャパネットたかたはテレビを使ったライブコマースの走りとも言えます)
また、テレビは家のリビングにあり、みんなで一緒に見たり、食事中にも家族と見ることができたりします。見たい番組の時間帯が被り、揉めた経験がある方も多いでしょう。チャンネルが12までしかなく(衛星などを除き)選択肢も限られています。一方で、スマホは場所を選ばず持ち運びができ、チャンネル数に限りがないため、様々なコンテンツを楽しめます。そのため、スマホでライブコマースを行おうとするとユーザーが分散してしまうという弱点を持っています。
そして、ライブコマースで販売する商品が売れるか否かは、商品を紹介する人に依存します。紹介する人が、「心からおすすめしたい」と熱のこもった想いがなければ、視聴者の心に響きません。視聴者からの質問に対して的確な回答ができなければ、購買意欲を削いでしまう可能性もあるのです。インフルエンサーのコアなファンは、見ただけで「偽りのない情報か?本人の言葉で説明しているか?」を敏感に感じ取ってしまいます。インフルエンサーを起用したところで、本人に思い入れや熱量がなければ商品は売れないでしょう。
ライブコマースがテレビショッピングの枠を超えるためには、ライブコマースでしか実現できない要素を充実させていく必要があります。例えば、「お店に行った気分になれる」リアルタイムな疑似体験や、ライブ配信ならではの「”ドキドキ”や”わくわく”を感じる瞬間」を創出し、思わず購入したくなるような価値を取り入れてくべきです。以上のように、日本でライブコマースが普及するにはまだまだ課題が残っていることがわかります。
中国では、ライブコマースでの買い物が主流になっています。2020年3月の時点でライブコマースのユーザーは5億5,982万人、インターネット利用者の約62%が利用していると言われています。(※)
中国でライブコマースが広まった要因として、「商品への信頼性の低さ」が挙げられるでしょう。偽物や品質の悪い商品を買わないために、消費者は信頼性が保証できる情報を求めています。そこで、中国でKOL(Key Opinion Leader)と呼ばれる、専門性の高いインフルエンサーの影響力が発揮します。消費者はライブ配信を視聴し、「KOLがおすすめしているなら信頼できる」というように、配信者の信頼性が商品の信頼性に結びついています。
中国のライブコマースにおいて、活発なカテゴリはファッション・美容関連ですが、最近では生鮮食品のライブ配信も人気が集まっています。このことから、食品の生産地・供給元にも関心が高まっているという国内事情がうかがえます。
※参考:ライブコマースの動向整理 2020年6月|三菱UFJリサーチ&コンサルティング
ライブコマースとは、ライブ配信とネットショッピングを組みわせた販売の形態のことです。専用のプラットフォームや自社のECサイト、SNSアカウントを使って配信を行い、オンライン上で接客をします。
普通、ネットショッピングだと画像や説明文だけでしか商品の情報を得ることができませんが、ライブコマースを利用すれば、ユーザーはコメント機能を使って質問ができます。商品の使用感や雰囲気を事前に確認できるので、購入前に商品のイメージを掴めるといったメリットがあります。配信を行う企業は、実際に商品の魅力を映像で伝えることができ、購入までつなげることができます。
ここでは実際にライブコマースを導入した事例を紹介します。
化粧品メーカーの資生堂は、以前から中国の顧客を対象としたライブコマースを行っており、ECの売上アップを実現していました。その好調を受け、2020年7月から国内向けのライブコマースを始めました。ビューティーコンサルタントが商品の説明や使い方を説明し、ユーザーからの質問にもリアルタイムで答えるなど「双方向のコミュニケーション」を行っています。
百貨店の三越伊勢丹は、2018年にライブコマースを導入して結果を出した企業です。お歳暮やお中元のギフトをライブコマースで販売。華やかなパッケージや商品の魅力をリアルタイムで消費者に伝えました。三越伊勢丹のライブコマースは大きな反響があり、ECサイトにおいて過去最高売上を達成しました。2019年、2020年にも同様にお歳暮・お中元の紹介をライブ配信しています。
JOUNAL STANDARDをはじめ多数の人気ブランドを取り扱う、ファッション通販サイトのベイクルーズは2020年5月からライブコマースサービス「LIVE STYLING」を始めました。ファッションアイテムの紹介を交えつつ、スタイリングの提案をしています。アーカイブリストで配信済みの動画も見れるため、見逃してしまった人も動画で商品の特徴を知ることができます。
影響力のあるタレントやインフルエンサーにライブ配信をしてもらうことで、通常のマーケティングでは獲得できなかった購買層にアピールできます。また、企業や商品のイメージアップにも効果的です。そのため、配信者の選定は慎重に行うべきです。
従来のECは、商品を選ぶところから購入手続きまで消費者が1人で行いますが、ライブコマースの場合は配信者と視聴者の間で双方向のコミュニケーションが実現します。ライブ配信を通して、自宅に居ながら実店舗で買い物するような感覚と臨場感のある購買体験が得られます。
EC販売の利用者は増えていますが、まだネットで買い物をすることに抵抗を感じ、踏み出せない人もいます。その要因のひとつに、購入する前に商品を手に取れないという不安があるでしょう。洋服ならば「思っていた生地・シルエットと違ったらどうしよう」「サイズ感が合うか心配」という懸念点が生まれると思いますが、ライブコマースであれば気になったことをコメントで質問すると、配信者が答えてくれます。
従来のECサイトでは、掲載されている写真とテキストからしか情報を得ることができませんでしたが、ライブコマースでは視聴者が購入前に商品の情報を知れるため購入につながりやすくなり、購入後のミスマッチも防ぐことができます。
ライブコマースは、事前の告知や宣伝に注力する必要があります。なぜなら、短時間の配信中に人を集めなければいけないからです。有名人やインフルエンサーが配信者として起用されるのもライブ配信に興味を持ってもらうためです。ブランドのファン、あるいは好意的なユーザーを集められなければ、母数となるユーザー数も少なくなってしまいます。
また、ライブ配信は「配信者と視聴者で時間を共有すること」に意味があります。時間を逃してしまうと参加できなかったり、アーカイブで見ることができても質問ができなかったりするという欠点があります。SNSでの発信やホームぺージでの告知など告知・集客の仕組みを作り上げ、幅広く閲覧ユーザーを集めることがライブコマースを行う上で必要不可欠です。
ライブコマースを提供するサーバーやシステムによっては、サーバーが耐え切れずダウンしてしまうことも考えられます。
双方向でコミュニケーションが取れることがライブコマースのメリットであるのにも関わらず、ネット環境により円滑なコミュニケーションが取れなかったり、画面が乱れていたりすると反って視聴者はストレスを感じてしまいます。
また、配信中に問題が生じた場合、企業や会社のイメージダウン、炎上につながる恐れもあります。
ライブコマースには、向いている商品と向かない商品があります。向いている商品として、服やコスメなど『見栄えやトレンドの変化が早い商品』が代表的です。影響力を持つインフルエンサーが今の流行を紹介すれば、自社の商品をトレンドアイテムとしてアピールできます。
反対に、効果がでるまでに時間がかかる健康食品や、年齢層が高めの商品はライブコマースに向きません。なぜなら、購入する前に商品の使用感や雰囲気を知れることがライブコマースの魅力ですが、健康食品の場合は確かめようがないからです。また、ライブコマースは若い年代に利用者が多く、上の世代にはそこまで使われていないため、年齢層が高めの商品の売れ行きはあまり期待できません。
自社でライブコマースを導入しようと考えている場合は、ライブ配信でユーザーに魅力を伝えられる商品か?商品のターゲット層はライブ配信を見てくれそうか?を踏まえて検討してみてください。
※現在はサービスを終了しています
Yahoo!ショッピング LIVEは、Yahoo!ショッピングに出店しているストアがライブ配信を行えるサービスです。他のライブコマースサービスと違う点は、法人出店者向けのサービスということです。Yahoo!ショッピング LIVEは、テレビショッピングのインターネット版といったイメージです。
出典:Hands UP
ライブ配信アプリ、17LIVEが運営しているライブコマースサービスです。アパレルブランドのWEGOやEGOISTなどの導入された実績があります。複数のSNSに同時配信ができ、注文管理も簡単に行えるサービスとなっています。
出典:au PAYマーケット
au PAYマーケットは、auが運営しているECモールです。芸能人が配信者になっていることもあります。ライブの視聴にはアプリのダウンロードが必要になります。au PAYマーケットのライブ配信では、衣服から食品、電化製品まで幅広いジャンルの商品が紹介されています。
Instagramは、幅広い年齢層に親しまれているSNSですが、ライブコマースを行う上でも適したプラットフォームだと言えます。アパレルブランドをはじめ、様々な企業が利用しています。
ちなみに、PR会社であるベクトルの子会社は「Instagramライブコマースプラン」の提供をしています。Instagramのライブ配信機能を活用し、インフルエンサーやタレントから商品やサービスのPRを行うサービスです。商品の特性やサービスに合った配信者をキャスティングするほか、ライブ配信後はストーリーやフィードに投稿を行い、ECやHPに誘導します。このように、Instagramの特性を活かして、ライブコマースサービスとして使う方法もあります。
この記事では、ライブコマースについて説明してきました。ライブコマースのメリットは、配信者と閲覧者で双方向のコミュニケーションをとることができ、新しい客層を獲得できることです。
2018年以降、流行ると期待されていたライブコマースですが、2021年現在(執筆時点)では数々の国内サービスも終了し、流行らないのではないか?との見方もあります。
ライブコマースで成功させるには、テレビショッピングとECでは得られない付加価値を創出することが重要となります。ライブコマースの導入を視野に入れている場合は、自社の商品と想定しているターゲット層がライブコマースでの販売に合致しているか踏まえた上で、検討してみてください。