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Adobe Fireflyは商用利用に特化!画像生成AIが抱える著作権問題も解説

田邊 竜大

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田邊 竜大

Adobe Fireflyは商用利用に特化画像生成AIが抱える著作権問題も解説

「Fireflyは商用利用に使える?」
「画像生成AIはなぜ著作権に問題があるの?」

このような疑問をお持ちではないでしょうか。FireflyはAdobeが開発した画像生成AIです。生成する画像が著作権を侵害する心配がないため、気軽に商用利用できるツールとして期待されています。多くの画像生成AIは著作権問題をクリアできていないため、デザイン業務にAIの導入を検討している企業やクリエイターから注目を受けています。

しかしFireflyでできることや、他の画像生成AIは著作権に問題がある理由がわからない方も多いのではないでしょうか。本記事では、下記の項目について解説していきます。

この記事で解説していること

  • Fireflyが商用利用できる理由
  • 他の画像生成AIが抱えている著作権に関する問題
  • Fireflyを使用する際の注意点

    この記事を読めば、画像生成AIが問題視されている理由が分かります。Fireflyを使うメリットも理解できるため、ぜひ参考にしてください。

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    Adobe Fireflyとは

    FireflyはAdobeからリリースされた画像生成AIです。2023年6月現在、ベータ版が公開されており、Adobeアカウントがあれば無料で利用できます。最大の特徴は、生成したコンテンツが著作権を侵害しないという点で、他の画像生成AIとは一線を画すツールです。

    またFireflyは操作性の高さや、多機能な点も魅力的です。現在は、

    • Text to image
    • Generative fill
    • Text effects
    • Generative recolor

    の4種類しか利用できませんが、今後追加学習やベクター化機能などが追加される予定です。

    Adobe Fireflyは商用利用可能

    Fireflyの学習データは、以下のいずれかのみです。

    Fireflyの学習データ

    • Adobeが著作権を所有するコンテンツ
    • 著作権が切れている、誰でも商用利用できるコンテンツ

      そのため、クリエイターの著作権を侵害しません。公式サイトでは、以下のように記載されています。

      商業用としての安全性を考慮した高画質な画像

      将来的にFireflyは複数のモデルで構成され、さまざまなスキルセットや技術的バックグラウンドを持つユーザーの幅広いユースケースをカバーできるように調整されます。最初に搭載されるモデルは、Adobe Stockの画像や一般に公開されているライセンスコンテンツや著作権が失効しているパブリックドメインコンテンツを対象としており、画像やテキストエフェクトを中心に、商業利用として安全性を考慮したコンテンツを生成するように設計されています。
      引用:アドビ、新たなジェネレーティブAI「Adobe Firefly」を発表

      著作権を気にしないで済むのは、フォトストックサービスも運営しているAdobeが開発したからこそのメリットです。

      画像生成AIは著作権的にはグレー

      Firefly以外の画像生成AIが、有名なキャラクターを生成できるのは、学習データに著作物も含まれているためです。

      実際にゲームの登場人物を入力し、著作権に配慮されているかを検証してみます。下記画像はFireflyとStable Diffusionに、「mario」と入力して得られた画像の比較です。やはり、Stable Diffusionは特定の著作物を学習したとしか思えない画像を生成しています。

      一方、Fireflyは「mario」と入力しても有名キャラクターが出力されることはありませんでした。他のキャラクターを入力しても同じ結果であり、Fireflyが、いかに学習データの著作権に気を配っているかがわかります。

      他の画像生成AIでは有名なキャラクターの生成ができるがFireflyはできない

      このように、多くの画像生成AIは著作物でも出力できてしまうのが現状です。AIで作成した画像が著作権を侵害して、処罰が下った事例は今のところありませんが、倫理やコンプライアンスの観点から、企業が積極的に活用するのは難しいでしょう。たとえば日本では、集英社が画像生成AIで作成した写真集を発表しましたが、商品化はより慎重に考えるべきだったとして、わずか10日で販売を中止しています。

      また、EUでは2023年6月14日に、AIの規制法案が採択されています。内容には生成AIの学習データを公開する義務などが含まれているため、施行されれば著作権が不透明なAIツールが処罰の対象になるかもしれません。

      ベータ版では商用利用不可

      Fireflyは商用利用ができる画像生成AIです。しかし、現在公開されているベータ版では許可されていません。

      Fireflyを商用利用することは可能ですか?

      Fireflyのベータ版期間中は、Fireflyで生成されたアセットを商業目的で使用することはできません。  Fireflyが正式にリリースされた後、Fireflyで生成されたアセットの使用に関する詳細をお知らせする予定です。
      引用:Adobe Support Community | Firefly ベータ版 関連情報

      ベータ版のFireflyで作成した画像は、ダウンロードしても以下のようにウォーターマークが表示されます。商用利用したい場合は、本リリース予定の2023年下半期まで待ちましょう。

      Fireflyで生成した画像をダウンロードするとウォーターマークが表示される

      生成画像はAdobeから知的財産として補償される

      Adobeは2023年6月8日にプレスリリースを発表しました。Fireflyで作成した画像が、商用利用できる点について強調すると共に、知的財産として補償する旨を明言しています。

      Adobe Fireflyは、安全に商用利用できるように設計されており、アドビから知的財産(IP)の補償を受けることができるため、企業は安心して本ソリューションを組織全体に導入することができます。
      引用:Adobe | アドビ、「Adobe Firefly エンタープライズ版」を発表

      「補償」とは、損害した金銭などを補うことです。つまり、Fireflyを利用して生成した画像が、著作権を侵害したとして訴訟されても、Adobeが金銭の負担をすることを意味します。したがってFirefly登場により、コンプライアンスに厳しい大手企業などでも、安心して画像生成AIツールが利用できるようになるでしょう。

      学習データに使わせないためのタグが導入予定

      Adobeは著作権侵害への対策として「Do Not Train」タグの導入を予定しています。Do Not Trainタグとは、クリエイターのデジタル作品をAIの学習に使わせないようにする機能です。

      クリエイター所有のコンテンツがモデルのトレーニングに使用されないよう要求するために、画像のコンテンツクレデンシャルに「Do Not Train」タグを付ける機能も含まれています。
      引用:Adobe | アドビ、新たなジェネレーティブAI「Adobe Firefly」を発表

      Adobeとクリエイターの双方が、コンテンツの著作権を意識することで、Fireflyの透明性の更なる向上が期待できます。

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      Adobe Fireflyでできること

      現在公開されているベータ版では、画像生成・編集機能が4つ利用できます。無料とは思えないほど高機能で、クリエイティブな作業に活用できます。また、Fireflyは機能の追加や、他のAdobe製品との連携なども発表されているため、より多くのシーンでの活躍が期待されているツールです。それぞれの機能について解説していきます。

      画像生成・編集

      現在利用できる機能は以下の4つです。

      機能 概要
      Text to image テキストの指示から画像を生成する
      Generative Fill 画像の一部分を削除したり、要素を追加したりする
      Text effects テキストスタイルを作成する
      Generative recolor SVG形式の画像の色構成を再編成する

      Text to image

      Text to imageは、テキストによる指示で画像を生成する機能です。対応言語は英語のみのため、翻訳ツールなどを併用して利用しましょう。「Shaved ice on the beach」(ビーチに置いたかき氷)と入力すると下記画像が生成されました。

      FireflyのText to imageを利用して作成したビーチに置いたかき氷の画像

      プロンプトに忠実で、精度も高いといえます。また、右側の操作パネルで、「写実的」「サイバーパンク」など、生成する画像のスタイルの選択が可能です。

      Generative Fill

      Generative Fillは画像の一部分をブラシツールで選択し、不要部の削除や要素の追加ができる機能です。オブジェクトを自動選択する機能もあるため、背景の差し替えも簡単に行なえます。

      下記画像は空の一部を選択し、「ballon」(気球)と入力した結果です。

      FireflyのGenerative Fillを使用して画像の一部に要素を追加した

      遠近感が意識された自然な気球が生成できました。

      Text effects

      Text effectsは任意のテキストとエフェクトを入力し、テキストスタイルを作成する機能です。操作パネルにエフェクト例が記載されているため、参考にしてみましょう。

      「Web」というテキストに、「vegetable」とエフェクトを入力すると、下記画像が得られました。

      FireflyのText effectsを利用して野菜のテキストスタイルを作成した

      操作パネルを活用すれば、エフェクトを適用する広さなども選択できるため、よりイメージに近いテキストスタイルを作成できます。

      Generative recolor

      Generative recolorは、SVG形式の画像の色構成を再編成できる機能です。用意されている18色の中から選択できる他、テキストからも指示が出せます。下記画像は、ハートを持つ女性の画像の色を、紫から黄色に変更した結果です。

      FireflyのGenerative recolorでベクター画像の配色を再構成した

      ちなみに、現在カラーコードは認識できないようです。青系の色である「#11009 E」を入力しても下記画像のように、カラーコードとは異なる色を出力してしまいました。

      Generative recolorはカラーコードを認識できない

      Fireflyの使い方について、くわしく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

      今後解禁される機能

      下記は現在グレーアウトされ、利用できない機能です。

      機能 概要
      3D to image ・3Dイメージを画像にする
      Extend image

      ・画像の見えない部分を自動で補完する
      ・Photoshopですでに解禁されている

      Personalized results ・任意の画像を追加学習させる(愛犬の画像をテキストから生成することも可能になる)
      Text to vector ・編集可能なベクター画像をテキストによる指示で生成する
      Text to pattern ・シームレスなパターン画像をテキストから生成する
      Text to brush ・Photoshopなどで使えるブラシテキストから作成する
      Sketch to image ・スケッチや線画の色塗りなどを行う
      Text to template ・プレゼン資料のテンプレートなどをテキストから生成する

      これらの機能が解禁される時期はまだ発表されていませんが、本リリースに合わせて使えるようになると考えるのが自然でしょう。またFireflyは、他の画像生成AIに比べて機能が細かく分けられているため、目的に合わせて最適な使い方ができます。

      Adobe Creative Cloud との連携

      Fireflyは他のAdobe製品との連携が公表されています。

      今後、アプリケーションに順次統合され、はじめにAdobe Express、Adobe Experience Manager、Adobe Photoshop、Adobe IllustoratorでFireflyが利用できるよう計画を進めています。
      引用:Adobe | アドビ、新たなジェネレーティブAI「Adobe Firefly」を発表

      すでにPhotoshopには、FireflyのGenerative Fillが統合されています。Photoshop版では、出力される画像が新規レイヤーとして認識されるため、生成後も細かな調整が可能です。このように、Fireflyは既存のAdobe製品と組み合わせると、より高いパフォーマンスを発揮します。画像編集の難易度が下がるため、より多くの方がクリエイティブな作業を行えるようになるでしょう。

      Generative Fillについて、くわしく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

      Adobe Fireflyを使う際の注意点

      Fireflyを使う際は、以下の2点に注意しましょう。

      Fireflyを使う際の注意点

      • 今後無料で使えなくなる可能性がある
      • 規制ワードがある

        それぞれくわしく解説していきます。

        今後無料で使えなくなる可能性がある

        Fireflyが無料でベータ版を公開している理由は、多くのユーザーに、性能の高さを知ってもらうためだと考えられます。そのため、Fireflyのベータ版は本リリースに伴い、使えなくなる可能性が高いです。Fireflyの導入を検討している方は、今のうちに使用感などを確かめておきましょう。

        規制ワードがある

        Adobeは、生成した画像がフェイクニュースに使われる危険を考慮して、特定のワードを規制しています。主に暴力性のある単語に制限をかけているようで、下記画像のように「gun」と入力してもエラーが発生します。

        Fireflyにgunと入力してもエラーが表示される

        また、指示と異なる内容を出力する場合もあります。「war」と入力してみましたが、下記の通り山の画像が生成されました。

        Fireflyにwarと入力しても内容と異なる画像が生成される

        他の画像生成AIは商用利用できるのか

        以下3つの画像生成AIは、条件付きで商用利用ができると公式に記載されています。

        商用利用が許諾されている画像生成AI

        • Midjourney
        • DALL·E 2
        • Stable Diffusion

          ただし、商用利用が可能と明言されていても、著作権に配慮されているかは不明です。今後のAI規制などに影響を受けたくない方は、個人利用に留めておくのが無難でしょう。

          それぞれについて、くわしく解説していきます。

          Midjourney

          Midjourneyは、人間の手や細かい表情も生成できる高性能な画像生成AIです。商用利用に関して、次のように記載されています。

          Your Rights
          Subject to the above license, You own all Assets You create with the Services, provided they were created in accordance with this Agreement. This excludes upscaling the images of others,

          和訳:お客様の権利
          上記のライセンスに従い、お客様は、本サービスを使用して作成したすべてのアセットを所有するものとします。ただし、他人の画像をアップスケールすることは除きます。
          引用:Midjourney | Terms of Service

          Midjourneyで作成した画像は商用利用が認められています。しかし、以下に該当する場合は認められていません。

          Midjourney で商用利用が認められていないケース

          • 他人の画像の解像度を上げただけのコンテンツ
          • 無料会員の場合
          • 年間総収入が100万米ドル以上で、Proメンバーシップでない場合

            また、Fireflyと異なり、生成する画像の保証などはしないと明言されています。

            Midjourney makes no representations or warranties with respect to the current law that might apply to You.

            和訳:Midjourneyはあなたに適用される可能性のある現行法に関して、いかなる表明または保証も行いません。
            引用:Midjourney | Terms of Service

            DALL·E 2

            DALL·E 2は、ChatGPTなどもリリースしているOpenAIが開発した画像生成AIです。さまざまな機能が直感的に利用できる点が魅力です。商用利用に関して、以下のように述べています。

            Subject to your compliance with these Terms, OpenAI hereby assigns to you all its right, title and interest in and to Output. This means you can use Content for any purpose, including commercial purposes such as sale or publication, if you comply with these Terms.

            和訳:お客様が本規約を遵守することを条件として、OpenAIは、Outputに関するすべての権利、権原および利益をお客様に譲渡します。つまり、お客様は、本規約を遵守すれば、販売や出版などの商業目的を含め、いかなる目的にもコンテンツを使用することができます。
            引用:OpneAI | Terms of use

            DALL·E 2は商用利用ができる旨を明示しています。ただし、暴力・性的なコンテンツの生成、アップロード共有は認められていないため、注意してください。

            DALL·E 2について、くわしく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

            Stable Diffusion

            Stable Diffusionはオープンソースの画像生成AIです。自由度が高く、以下のような特徴を持ちます。

            Stable Diffusionの特徴

            • 自身のパソコンにインストールして利用できる
            • 多様な拡張機能を導入できる

              Stable Diffusionは、出力設定のカスタマイズが気軽に行えるため、好みの画像が生成しやすいです。商用利用について、開発元のStability AI社は次のように述べています。

              LICENSE
              The model is licensed with a CreativeML OpenRAIL++ license. The authors claim no rights on the outputs you generate, you are free to use them and are accountable for their use which must not go against the provisions set in this license. The license forbids you from sharing any content that violates any laws, produce any harm to a person, disseminate any personal information that would be meant for harm, spread misinformation and target vulnerable groups. For the full list of restrictions please read the license

              和訳:このモデルはCreativeML OpenRAIL++ライセンスで提供されています。作者は、あなたが生成した出力について何の権利も主張しません。あなたはそれらを自由に使用することができ、このライセンスで設定された規定に反してはならないそれらの使用について責任があります。このライセンスでは、法律に違反するコンテンツ、人に危害を加えるコンテンツ、危害を加えることを意図する個人情報を広めるコンテンツ、誤った情報を広めるコンテンツ、脆弱なグループをターゲットにするコンテンツを共有することを禁止しています。制限事項の詳細については、ライセンスをお読みください。
              引用:Hugging Face stable-diffusion License

              危害を与えるコンテンツでなければ、Stable Diffusionは商用利用が可能です。ただし、特定のキャラクターに特化させる追加学習を行う場合は、学習元データの規約にも注意しましょう。

              Stable Diffusionの商用利用について、くわしく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

              まとめ

              本記事ではFireflyの商用利用に関する、以下の項目について解説しました。

              この記事で解説したこと

              • Fireflyが商用利用できる理由
              • 他の画像生成AIが抱えている著作権に関する問題
              • Fireflyを使用する際の注意点

                Fireflyは学習データがクリーンなため、安心して商用利用ができます。公式から知的財産である保証も受けられるため、コンプライアンスに厳しい企業でも問題なく利用できるでしょう。

                実際に、有名なキャラクター名を入力して画像を出力しましたが、著作物が生成されることはありませんでした。規制に振り回されずに画像生成AIを商用利用したいと考えている方は、Fireflyの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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                この記事を書いたライター

                田邊 竜大

                田邊 竜大

                運営元のJetB株式会社メンバー。YouTubeやTikTokなど、さまざまなSNS運用をしていた経験を買われて優良WEBに参画。「難しいことをシンプルに」をテーマに記事を執筆。休日はフットサルかゲームをして過ごしている。神奈川県出身。

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                この記事を監修した人

                藤澤 尚也

                藤澤 尚也

                優良WEB編集長・JetB株式会社メディア事業部SV。前職の大手IT企業の同僚から誘いを受け、2018年に営業として入社。その後Webディレクターに転身し、3年以上経験を積む。多様な経験からくる幅広いWebリテラシーと持ち前の文章力を買われて優良WEBの編集長に抜擢。ベースとラーメン二郎をこよなく愛する。

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