「ASPって何?」
ECサイトを作ろうとしている方は、よくこのワードを目にするのではないでしょうか。
ASPとは、提供されたクラウド上でECサイトを構築できるサービスのこと。必要なシステムや機能が備わっているため、手間なくECサイトを立ち上げられます。
本記事では、
- ASPでECサイトを構築するメリット
- ASPの選び方
- ASPの料金相場
について解説していきます。ぜひこの記事を参考に、自社に合ったASPを見つけてください。
目次
ASPとは
ASPとは、Application Service Providerの略で、提供されたクラウド上でECサイトを構築できるサービスです。インターネット上でECプラットフォームをレンタルして利用するカートシステムのため、サーバーを用意する必要がなく、簡単にECサイトを立ち上げることができます。
ASPのメリット
初期費用を抑えてECサイトを開設できる
自社でフルスクラッチのECを構築するとなると膨大な費用がかかりますが、ASPであれば自社でシステムを開発する必要がないため、安価で利用できます。
ASPは、初期費用と月額のランニングコストがかかりますが、フルスクラッチの場合にかかる高額なシステム開発・構築費用や、パッケージECの場合にかかるライセンス費用を払う必要はありません。機能は制限されているものの、無料で利用できるASPのサービスもあるので、リスクを減らして運営したい場合におすすめの構築方法です。
短期間で導入できる
ASPは導入のためにわざわざ開発を行う必要がないため、サービス申し込み後、数日もしくは即日でアカウントが発行されます。自社でサーバーを用意したり、ソフトウェアをインストールしたりする必要もなく、専門知識がなくてもすぐに利用を開始できます。
運用保守や機能改善が簡単にできる
ECサイトを正常に機能させ、セキュリティを保つためにはECサイトの運用保守が重要です。ASPの場合、運用保守や機能改善はASP事業者が行うため、管理の手間を省くことができます。
ASPのデメリット
個別のカスタマイズがほぼ不可能である
デザインや機能はASPのサービスに依存するため、個別のカスタマイズはできません。テンプレートが豊富にあったり、カスタマイズができたりするサービスも存在しますが、基本的には一定のデザインからの選択となります。
外部システムとの連携が不可能である
基本的に、自社の基幹システムや物流システムとの連携はできません。連携できるのはASP側がもともと提携しているシステムのみとなります。事業規模が拡大した場合、ASPで対応できなくなり、オープンソースへの移行が必要になる場合も考えられます。
ASPを選ぶ際に押さえておくべきポイント
①利用料金はいくらか
ASPを利用する際に必要になる費用は、基本的に「初期費用+月額費用」です。ただし、これはECサイトの運営におけるランニングコストであり、サービスによっては購入された際の決済手数料やオプション機能を利用するための追加料金など、基本料金とは別に費用がかかります。そのため、初期費用と月額費用以外の料金形態も事前に確認しておく必要があるでしょう。
初めてECサイトを構築する場合は、数千円~1万円以下のASPサービスがおすすめです。無料で使えるASPだと、企業のECサイトとして成長させていく過程で、機能が不十分であったり、手数料が高くついたりする可能性があるためです。
商品やブランドのコンセプトに合ったECサイトを作りたい場合や、最初から一定の注文が予測できる場合はある程度本格的な(月額1万円以上など)のASPを選ぶのが良いでしょう。
②求める機能が備わっているか
ASPは機能の追加が難しいため、最初から求める機能が備わっているかどうかが重要です。どのASPにも、ECサイトの運営に必要な最低限の機能は搭載されています。しかし、以下のような機能はサービスによって異なるため、サービス選定時に確認するようにしましょう。
・決済機能に選択肢はあるか
・定期購入
・予約販売
・ポイントの付与
・実店舗との連携
・外部ツール、システムとの連携
・SNS連携
③自社の商品に合ったデザインか
ASPはデザインのカスタマイズ性が低い傾向にありますが、その自由度にも幅があります。ECサイトのデザインやブランドの世界観を重視するなら、自由度の高いASPを選ぶようにしましょう。
④スマホ対応はできているか
実際問題、いまどきスマホ対応していないASPは、ある程度シェアがあるASPではほぼ存在しないでしょう。しかし、特殊な機能(越境ECなど)に特化したシステムの場合は、対応していない場合もあるので注意が必要です。
ECの利用において、『スマホからの購入は全体の7割を占める』というデータもあります。また、タブレットやデスクトップなど複数のデバイスによって、ECサイトを閲覧するケースも多数存在します。マルチデバイスに対応した表示は、ECサイト構築にあたって重要なポイントです。
さらに、スマホでカートに入れた商品が、別のデバイスで見ても入る仕組みがあると利便性が高くなります。
⑤サポートは充実しているか
専属担当者がついたり、利用者専用のセミナーがあったりとサポートの内容は多岐にわたります。ECの運営に不安を感じている方は、手厚いサポートが用意されているサービスを選びましょう。
⑥SEO対策はしやすいか
月額費用が高くなるほどSEO対策をしやすくなる傾向があります。無料で利用できるASPは、ほとんどSEO対策はできません。上位層のASPサービスでも、本格的なSEO対策をやろうとするとWordPressなどのCMSを使う必要がでてきます。
⑦管理画面が使いやすいか
編集や登録作業は日々かなりの時間を費やすことになります。導入を検討する段階では意外と見落としがちな点ですが、管理画面の使いやすさも事前に確認しておくと良いでしょう。
⑧どんなECサイトにしていきたいか
機能や規約に制限があり、やりたいことが実現できない場合も。サービスを乗り換えるためのデータ移行には多くの時間とコストがかかります。本格的にECサイトを構築するのであれば、ある程度の規模まで問題なく利用できるサービス、あるいはプラン変更で対応できるサービスを選ぶようにしましょう。
ASPは3つの価格帯に分類可能
ASPは、価格帯によって以下の3つに分けることができます。
・無料で商用利用できるASP
・月額千円~1万円以下のASP
・月額1万円以上のASP
無料で商用利用できるASP
ハンドメイド商品やオーダーメイド商品、音楽・動画コンテンツなどの販売が手軽に行えます。
ECサイトに最低限必要な機能を備えたASPで、簡単かつ迅速に導入ができます。
■こんな方におすすめ
個人や小規模の事業者、主婦、副業でECサイトの運営をしようと思っている方
月額千円~1万円以下のASP
ECサイトに必須となる機能に加えて、ECサイトの運営における集客・売上を伸ばすための機能も備えたASPです。
■こんな方におすすめ
中小企業の事業者
月額1万円以上のASP
ECサイト運営の効率化や集客・売上アップのための機能が充実しており、3つのASPの中では1番デザインのカスタマイズ性に優れています。
■こんな方におすすめ
中規模以上の事業者や、素早い成長が見込めるECサイトを構築しようと思っている方
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月額の安さだけで判断しない
無料ASPには、売り上げに応じた販売手数料がかかります。ある程度の売り上げが見込めるのであれば、月額有料ASPの方がはるかに安くすむ場合があります。月額だけに目を奪われず、販売シミュレーションをして実際にかかる費用をあらかじめ計算しておきましょう。
価格帯別におすすめのASPを紹介
ここでは、価格帯別におすすめのASPをご紹介します。
無料で利用できるASP3選
①STORES
出典:STORES
STORESのフリープランでは、初期費用・月額費用が0円でECサイトを開設できます。フリープランでも豊富な決済手段が利用できることに加えて、アイテム登録数は無制限です。
月商20万円~の場合は、スタンダードプランの利用がおすすめです。
プラン名 | フリープラン | スタンダードプラン |
月額料金 | 0円/月 | 2,178円(税込)/月 |
決済手数料 | 5% | 3.6% |
STORESでは、売上金を翌日に振り込む「スピードキャッシュ」、保管・梱包・発送すべてを委託できる「倉庫サービス」など便利なオプションも提供しています。
②イージーマイショップ
出典:イージーマイショップ
イージーマイショップは4つの料金体系でサービスを提供しており、無料版では初期費用・月額費用が無料でECを開設することができます。Instagramショッピング、Facebookショッピング、ハイクオリティな画像を登録できる「かんたんキレイ登録」など無料版でも高機能を使えます。
ただし、データ記録容量が0.1GBであったり、再販リクエスト受付やセット販売、お問い合わせ管理ができないなど機能の制限はあります。
導入費・月額固定費無料でクレジット、コンビニ決済ができる「イージーペイメント」にも対応しています。
③BASE
出典:BASE(ベイス)
BASEは、初期費用・月額費用が無料でECサイトを開設できるサービスです。開設したその日からすぐに販売を始められるという手軽さから、140万ものショップがBASEで作成されています。
購入が成立した場合は、決済手数料として「3.6%+40円とサービス利用料の3%」(実質6.6%)を支払う必要があります。また、売上金を引き出す「振込申請」を行う際にも、振込手数料(一律250円)と事務手数料がかかります。事務手数料は2万円未満の場合は500円、2万円以上の場合は0円です。申請してから10営業日(土日除く)で口座に売上金が振り込まれます。
BASEは、インスタントECの代表的な例です。
「インスタントEC」とは?
インスタントECとは、無料で手軽にネットショップを開設できるサービスのことを指します。サービスを認知してもらう目的として、「簡単、〇分で開設できる」というふれこみが使われることが多かったため、(カップラーメンを連想させ)『インスタントEC』と呼ばれるようになりました。
インスタントECは初期費用や利用料、その他手数料等は一切かかりません。しかし、機能やデザイン面での制限が多いため、大規模なECサイトの構築には向かないでしょう。ブランディングが不要の商材や、個人事業者に向いているサービスです。
月額数千円~1万円以下のASP3選
④MakeShop
出典:MakeShop
MakeShopは、10,000店舗の導入実績を持つASPです。業界トップクラスの651の機能が揃っているため、あらゆる課題に対応できます。メール・電話・オンライン掲示板を使っていつでも相談できる環境が整っており、初めてでも安心してECの運営が始められます。
MakeShopの特徴は、月額費用と初期費用のみでECの運用ができることです。どれだけ売っても、売上手数料はかかりません。
売れる機能をすべて備えた「プレミアムショッププラン」は、月額費用 11,000円(税込)、初期費用 11,000円(税抜)で利用ができます。
⑤カラーミーショップ
出典:カラーミーショップ
カラーミーショップは国内最大級のASPで、40,000店舗に導入されています。「フリープラン」「レギュラープラン」「ラージプラン」の3つがありますが、おすすめは機能制限がない「ラージプラン」です。
カラーミーショップでは販売手数料が0円のため、売上規模が大きくなってもコストを抑えての運営が継続できます。月額費用(2022年4月改訂後の料金)
・フリープラン 0円
・レギュラープラン 4,950円
・ラージプラン 9,595円
初期費用
3,300円
※フリープランは無料
⑥Shopify
出典:Shopify
Shopifyは、世界170万以上の店舗に利用されているASPです。どのプランでも初期費用は無料で利用できます。多言語・多通貨対応に優れているため、越境ECや海外進出を考えている場合におすすめのASPです。ECサイト構築や運営に多少専門知識が求められますが、デザインや機能を自由にカスタマイズしたい場合にも向いています。
ベーシックプランは月額29ドル(3,000円前後)で、決済手数料は3.4%~とリーズナブルな価格でECの運営ができます。アップグレード・ダウングレードいつでもプラン変更可能なので、事業の成長に合わせてプランが選べます。
月額費用
・ベーシック $29/月
・スタンダード$79/月
・プレミアム$299/月
月額費用1万円以上のASP3選
⑦ショップサーブ
出典:ショップサーブ
ショップサーブは、EC事業で20年という歴史を持つASPです。完全担当営業制を採用しており、運営にあたって分からないことがあればいつでも相談することができます。他にも、ページ制作や集客プロモーションなどの代行サービスも提供しており、バックアップ体制が整っています。
デフォルトでコンテンツ管理機能が備わっていますが、コンテンツSEOに対応できないため、オプションで「コンテンツ管理の部分だけWordPressにできるプラン」が用意されています。
ショップサーブでは4つのプランを提供しており、自社の運営スタイルに合ったプランから選ぶことができます。各プラン、ECサイト構築に必要なすべての機能と専任のサポートが標準で搭載されています。
月額費用
・パブリック 11,400円+税
・ベーシック 16,500円+税
・プライム 22,000円+税
・プレミアム 46,800円+税
初期費用
15,000円+税
⑧futureshop

出典:futureshop
futureshopは、店舗・ブランドのファン化に向けたキャンペーン機能が豊富で、アパレルやファッションのECサイト制作に特化しているASPです。デザインの自由度やSEO対策を重視する場合によく用いられています。
新CMS機能、「commerce creator」を利用することで、「ページデザインのカスタマイズ」やパーツの共通化による「更新性の向上」が可能になります。
商品数やオプションを選んで、費用を抑えつつECサイトを本格運用できる「Standardプラン」とより本格的なECの運営ができる「Goldプラン」の2つがあります。
費用
・Standardプラン 初期費用 22,000円~、月額費用 22,000円(税抜)~
・ Goldプラン 初期費用 52,000円~、月額費用 81,000円(税抜)~
⑨aishipR
出典:aishipR
aishipRは、スマホファースト設計・レスポンシブデザインに特化したECプラットフォームです。月2回の無償機能バージョンアップにより、いつでも最新の状態で利用することができます。オーダー商品や複数発送、商品ごとに温度帯と出荷場所が設定可能な機能など、ユーザーのニーズに配慮した機能が充実しています。
月間注文数100件程度までの小規模ECサイトには「エントリー」、月間注文数が200件以上のECサイトには「ベーシック」、独自機能をカスタマイズしたい場合は「アドバンス」がおすすめ。3つのプラン、8つの料金体系でサービスを提供しています。スマホユーザー、タブレット端末ユーザーの売上を重視するECサイトに向いているASPです。
費用
・エントリー
初期費用 20,000円、月額費用 9,800円~ +その他手数料
・ベーシック
初期費用 30,000円~、 月額費用 19,800円~ +その他手数料
・アドバンス
初期費用 ¥100,000、月額費用 89,000円 +その他手数料
モールやASPもいいけど、本格運用にはオープンソースやフルスクラッチがおすすめ
ここまでASPについてご紹介してきましたが、ECを本格的に運用する場合はオープンソースやフルスクラッチがおすすめです。なぜなら、他のサービスに依存して運営することはリスクを伴うからです。Webは運用していくごとに集客効果が蓄積されていくため、集客を育てていくという発想がWebサイトにはあります。
その一方で、ネットショップ・ASPに限らず私たちが気づかないうちに終了しているサービスも存在します。他のサービスに頼って運営する場合、突然サービスが終了しても文句は言えません。ASP上に大量の商品を登録していたり、コラムを書いたりしていても、サービスが終了すればリンクは無効となり、リピーター離れにつながります。
そういった面から、どのサービスにも依存しない自社サイトを持っておくことで、リスクヘッジができます。自社ECサイト構築のECには「オープンソース」と「フルスクラッチ」があります。フルスクラッチは膨大な費用がかかることから、小規模ECには向きません。そのため、カスタマイズができ、自由な運営が可能な『オープンソース』がおすすめです。
代表的なオープンソースとして、WordPressが挙げられます。WordPressそのものは、オープンソースCMSですが、「WooCommerce」などのECプラグインを利用することで、ECサイトとしての役割を果たせます。意外と知られていませんが、WooCommerceは世界でシェアNo.1のカートシステムです。利用者も多いため、カスタマイズに関する情報を簡単に入手できることもWordPressの特徴です。
参照:2019年にサービス終了・終了予告されたEC関連10サービスまとめ|eコマースコンバージョンラボ
自社に合った構築方法でECサイトの運営を
この記事ではECサイト構築のひとつ、『ASP』についてご紹介してきました。ASPは手軽にECサイトの構築・運営ができるサービスです。
ASPという大きいくくりの中でも、価格帯で3つに分けられ、販売する商品やECサイトの規模によって最適なASPは変わってきます。どんな商品を販売するのか?将来的にどうしていきたいのか?を考え、自社に合った方法でECサイトの運営をしてみてください。